インターネットでのアイデンティティをまごつかせて

第二の思春期を終えたオジサンが、何故私は働くのか私の生きている意味はなんなのかについて思春期のように省察するブログです。

『働くということ―「能力主義」を超えて』を読んでの私的感想

 働くことに疑問を感じているし、私も教育社会学に一時は身を置いていたのもあり読んでいたが結論から言えば私が期待したものではなかった。
しかし、その一方でこの本を読むことによってーどこが私の期待と違っていて、それは何故かを通して自分の疑問をより明確に出来るかもと考えた。*1

まずこの本の不誠実なところは、「働くこと」という題名と「選ぶ・選ばれること」の結びつき、論の流れが雑なところだ。とても強引で後付け感が否めない。著者は能力主義、その能力を根拠に選び・選ばれるこの労働市場・社会に対する問題定義、ならびに能力とは何かを専門としているのだが、本書を出版するにあたり「働くということ」と一般的なタイトルをテーマにして売り出したのだろう。ちょっと不誠実だ。著者は敵情視察のためコンサルに勤めていたなんて言っているが、それも違うだろうなと覚めた気持ちになる。論点をずらすのは仕方がないかもしれないけれど、もう少し、選ぶことと働くことをしっかり繋げて欲しかったし、そこを誠実に語ってほしかった。
 実際この本を読んでみれば、能力を、一元的な価値のもと選別される根拠となってる個人の能力というものを批判することがテーマであり、選別と能力の関係を著者が専門としていた能力開発・組織開発分野での経験を活かして語られる。語られる内容は、一概に優れた高い能力なんてものはなく、物差しもなく、そんな曖昧なもので個人を能力で選別するのは誤っている。また成果を出す=高い能力という単純なものではなく、個人だけの能力に還元されえない。成果をあげるには、個人だけではなく組織としての力も大事であり、その組織を形成するにはAやBやCという異なる能力を上手く適材適所に配置して、人それぞれ得意な分野・領域で活躍することができれば、よりよい成果を生み出せるかもしれない。個人ではなく組織として、一元的な視点ではなく多面的・多角的な視点になって組織づくりをして成果をあげていくのがいいというのが論旨であろう。
 一人で大きな船を作ることはできないし、一人で大きな船を作る能力を個人に求めるのはナンセンスで、チームとして大きな船をレゴブロックのように作ることが大切だと言いたいのだと思う。そしてまた、一人一人は違う形をもったレゴブロックであり、一つのパーツで大きな船を作ることはできないから、色々な形のパーツを合わせて大きな船を作ることを目指そう、その点で、高い能力とかではなく、適材適所という視点が求められるよね。酷い言い方をすれば、みんなちがってみにな良いし悪いとこもある。そうした差異を受け入れて、それを実際どうやって組み合わせて、他人とうまくやっていくか自分の視点を変えていくか、それが大切というのが端的にシンプルな本書のいいたいことだろう。(客観的に単一的な観点から能力を測ってエビデンスとして数値化・見える化できるなんていうのは都合のいい誤魔化しだとも)
 言いたいことは分かるが、これは「働くということ」だろうか。働くということは個人だけではなく、組織・集団つまり他人と力を合わせてやることだよということしか言っていない。そもそもこの本は「働くということ」自体には疑問を投げかけてはいなかった。そこは本書の視座から離れるのだろうが、私としてはそこを求めていたので肩透かしを食らった気分だ。
 結局のところ、歯車の・レゴブロックの形はいろいろあるー色々あるのが当然だけど、そのいろいろなレゴブロックを上手く配置して、その人に適した自分に合った場所で働くことが活躍に繋がりますよ!環境・空気づくりって大切なんですよ!(もちろん、ある程度の能力は必要ですけどね☆)というエクスキューズまで丁寧に添えてくれた。あとまー視点が労働者であっても中間管理職への一冊という性格が強かった。完全にNot for meだった。現代の働くことの辛さの一因、ギスギス感の一因に生涯学習やリスキリングといった能力主義と一意的な能力による選別主義が原因といっているが、私の働きたくなさは、そこにはないのだろうなと分かった。

 この本を読んでより私の問題としたいこと、テーマが明確になった。

  1. そもそも、レゴブロックに歯車に(柔軟な流動性の高い社会でしなやかに戦えるスライムに)なりたくない人はどうしたらいいのか。
  2. なぜこんなにも働かなければならないのか
  3. 労働とは、働くとはどういうことなのか

このあたりのこと考えたいのだろう。
つまり私はなぜ働かなければならず、かつ何故こんなにも働きたくないのか怠いのか。について考えたい。どのように組織内で働くか、視点を変えてみるかではない。

*1:手癖で殴り書きすぎたか